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健康保険の適応および承認取得について

免疫細胞療法は自由診療として実施されてきました。これまで健康保険が使えなかった理由はシンプルです。「法律がなかった」からです。臓器移植法を成立させないと臓器移植は保険適応にならなかったように、既存の仕組みで扱えない新しいタイプの医療は原則、法律を整えないと承認申請を行うことができません。「本人の細胞を体の外に採りだして培養し体内に戻す」免疫細胞療法は、手術・放射線・医薬品・輸血・臓器移植のいずれとも異なると考えられ「医師法」に基づいて自由診療で実施すべきであると国から指導を受けていました。

この数年、永年の治療実績が評価され急速に法整備が進みましたので、承認申請が可能になりました。実際に欧州の巨大医薬品メーカーが米国で承認取得した免疫細胞療法が日本でも2019年3月に承認取得しました。

ANK療法も承認申請することが法的には可能になりましたので当然、承認申請・保険適応の実現を目指します。但し、そのためには従来から行ってきた一般診療とは全く異なった莫大なコストがかかるプロセスを進める必要があります。

一般診療として実施例を積み重ね、実際に末期進行がんの患者様が何人も救命されたとしても、それで自動的に保険適応になるのではありません。保険適応を受けるためにはまず承認申請を行う必要があります。その際には一般診療とは異なる臨床研究としてのデータを蓄積する必要があります。
一般診療というのは様々な状態の患者様にとにかく元気になって頂くか最低でも延命して頂くために可能と考えられる治療を施すものです。患者様の病状の進行度や体力、治療履歴、治療のパターンなど千差万別となり統計処理に適したデータにはほとんどならないのが実情です。
一方、臨床研究というのは最初からデータを集めるのが目的であり、ある種の実験として治療を行いますので、臨床試験をする側が患者様を選びます。そのため臨床試験に参加される患者様は非常に限られた方だけになります。まず同じ部位に発生したがんで種類も同じ、可能な限りステージや治療履歴も同じで、臨床試験として行う治療も全員の患者様に同じパターンのものを施します。こうして統計処理する意味があるものとして臨床データを集めます。臨床研究としての治療を常に第三者が管理する形で大変な高額の管理費などをかけながら治験と呼ばれるものを実施します。
承認申請者としては今日では企業でなければ認められませんが、承認申請企業がほぼすべての治験実施・管理費用を負担します。莫大な資金力をもっていないと実際には治験のスポンサーにはなれず、従い承認申請もできません。「国が認める」という言い方をしますが、国が実態を調査してこれはいい治療だから保険適応にしよう、ということではなく、あくまで企業が莫大な資金を投じて実験データを集めて承認申請を行い、国の諮問機関が膨大な申請書類を審査するのです。

さて、米国では免疫細胞療法は「医薬品」として扱われ、既に何品目もの免疫細胞療法が政府承認を取得しています。(米国の場合は、政府承認を取得した上で、自由診療で実施されます)

2017年8月に大手医薬品メーカー、ノバルティス社が遺伝子改変した免疫細胞を用いるCAR-T療法の一種であるCTL019の米国政府承認を取得し話題を呼びました。点滴一回の治療費は47万5千ドル(おおよそ5000万円以上)します。激しい副作用を伴いますので附帯費用が更に5000万円から1億円必要とされています。どうしてこういう高額なものになるのかというと、培養費用もかかりますが、それ以上に治験費用やそれに先立ち「治験を実施するための承認」を得る費用、膨大な書類作成や第三者検証機関に支払う管理費用など、一般の方が想像できないレベルのコストがかかります。こうした開発費を乗せ、当然、莫大な収益も乗せますので、こうした値段になってしまいます。手術、抗がん剤、放射線などは数十年から百年以上の実績があり、開発費はもはや発生していませんが、それでも進行がんの患者さんがフルに受診されると何千万円という費用になっています。新しい医療の場合は開発費が乗る分、さらに高額になります。

今日では、新薬の開発にあたり巨大な医薬品メーカー(メガファーマと呼ばれ、日本には一社も存在しません)が1品目当たり数十億ドル(数千億円)の費用をかけて高い薬価を確保しやすい米国から承認取得し、その後、各国の承認を取得していきます。ベンチャー企業で同じ仕組みを動かすことは不可能ですので工夫が必要です。先ほどのCAR-T療法の一種CTL019も米国で高い薬価を取得した後、2019年3月に日本で承認取得という流れになっています。

ANK療法の場合、まずは国内のみの承認取得から始め、それも患者数が少ない希少がん種で他の治療がほとんど存在しないものを想定して準備をしてきました。これなら数千億円の費用は必要ありませんが、それでもベンチャー企業が自社で賄えるものではありませんので資金力のある大きな規模の企業様との提携を模索しています。

ところが治験を実施する前段階でもある程度のエビデンス(実際に治療を行った効果の証明)が必要ですので、一般診療として積み上げてきた治療実績の中から、「極めて余命が短いと考えられる進行がんの患者様」の中で、「他の治療は受けられていないか、ほぼ受けられていない」方で、「治療効果の判定に必要なデータがとり易い」といった条件を満たすケースを抽出し、国際学会で発表したり論文投稿(査読あり)しております。

今後は、承認申請のプロセスに合わせたフォーマリティー(形式基準)を厳密に満たした治験を実施(実際に行う治療そのものはこれまでの一般診療と変わりませんが、患者様の選別と管理体制が厳密になります)し、そのデータをベースに承認申請という運びになります。