Kenjiro Nagai, Syo Nagai, Yuji Okubo, Keisuke Teshigawara
World J Clin Cases 2023 October 26; 11(30): 0-0
DOI: 10.12998/wjcc.v11.i30.7432

Case report
Diffuse large B-cell lymphoma successfully treated with amplified natural killer therapy alone: A case report

PMCID:PMC10643074

進行性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後は不良で、5年生存率は約50%です。治療の主力は多剤併用化学療法であり、重篤な副作用と関連しています。ANK免疫細胞療法は、ナチュラルキラー(NK)細胞を増殖および活性化して、悪性腫瘍のみを攻撃します。ANK細胞はPD-L1陽性腫瘍細胞を攻撃するため、ANK免疫細胞療法は成人T細胞白血病(ATL)だけでなく、悪性リンパ腫に対しても有効であることを示しています。
今回我々は高齢の進行DLBCL患者に対しANK免疫療法で著効を示した症例を紹介します。症例は91歳の女性で、2022年4月に右腋窩リンパ節の突然の腫脹を主訴に来院されました。患者は、脾臓の関与または対側リンパ節腫脹がないことを考慮して、ステージIIと診断されました。ANK療法として、2022年7月28日に点滴6回分を培養するためにリンパ球分離採取が実施されました。副反応の発生を減らすために、培養後の通常量を半分に分けて合計12回分の培養細胞を得ました。培養NK細胞は週2回投与しました。治療効果は、1〜2か月ごとにコンピューター断層撮影と血清学的検査を行うことによって評価されました。この治療は病変の成長を抑制し、抗腫瘍効果は数ヶ月間持続しました。患者は軽度の副反応がありました。PD-L1免疫染色は陽性であり、治療の有効性が高いことが示されました。

ANK療法は、悪性リンパ腫の第一選択治療として使用できます。PD-L1陽性率は治療効果を予測することができると考えます。

(医療法人えびのセントロクリニック 院長 医学博士 長井賢次郎先生)

Kenjiro Nagai1, Syo Nagai, Yuji Okubo and Keisuke Teshigawara
Cancer Med J 6(1): 30-36.

Case report
ANK Therapeutic Prospects and Usefulness of PD-L1 and NK Activity as Biomarkers for Predicting Treatment Efficacy Revealed from the Treatment Course of Patients with HTLV-1-Associated Bronchioloalveolar Disease

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は、HTLV-1関連気管支肺胞疾患(HABA)として現れることがある予後不良の末梢性T細胞新生物です。ATLには化学療法が推奨されます。しかしながら、あらゆるタイプのATLやHABA関連ATLのくすぶりに対して効果的な治療法はありません。
過去にATL関連のくすぶり型HABAと診断され、労作時の呼吸困難と生産性の高い咳を呈した80代前半の女性に対し、ANK免疫細胞療法が有効であった症例を紹介します。初回治療後約10カ月間は病状を抑えられたが、その後徐々に悪化しました。約1年後、2回目の治療を行ったところ、軽度の副作 用が現れました。ANK療法の反復投与によってATL細胞の増殖は抑制され、この患者には有効な治療と思われます。治療間隔を長くしてもCT画像、呼吸機能ともに改善するなど、治療効果は高く、有効性と安全性は繰り返し実証されています。 ANK療法は、ATLやHABAの治療の柱になると期待されています。
ANK療法はPD-L1陽性腫瘍細胞を死滅させることが報告されており、ANK療法が優れた反応を示す一部の固形腫瘍にはPD-L1陽性腫瘍細胞が多く含まれています。ATLにPD-L1陽性の腫瘍細胞が多いことからANK療法が有効と考えられます。
さらに、活性化NK細胞を投与することは、NK活性が低下している患者の腫瘍細胞傷害活性を高める可能性があります。今後の研究が必要ですが、PD-L1陽性率とNK活性はANK療法の有効性を示すバイオマーカーになる可能性があります。
(医療法人えびのセントロクリニック 副院長 医学博士 長井賢次郎先生)

Kenjiro Nagai, Syo Nagai, Yuji Okubo and Keisuke Teshigawara. J Blood Lymph Volume 12:3, 2022.DOI:10.37421/2165-7831.2022.12.290

Case report
Efficacy and Future Prospects of ANK Therapy for ATL, Malignant Lymphoma and Solid Tumors

ANK療法はATL、前立腺がん、乳がんなど、あらゆるがんに対して有効です。ATLは化学療法が主な治療法ですが、効果は期待できず、副作用も多くあります。化学療法は、病状が進行した固形癌の患者さんや、高齢者、腎不全、心不全の患者さんに対しても同様に副作用の懸念があり、効果的とも言いにくいです。一方で、ANK療法はこれまでの報告から、ATL、固形癌の症例にも非常に効果的です。
ANK療法の作用機序を考えるとPD-L1陽性の腫瘍細胞を効果的に傷害するため、PD-L1陽性腫瘍細胞が多いと言われるATLに有効です。リンパ腫、胃癌、肺癌、乳癌、前立腺癌などの固形癌には、PD-L1陽性腫瘍細胞が多く含まれている場合があります。PD-L1 陽性腫瘍細胞が高濃度のものに対してANK療法を行うことは、既存の治療よりも効果的で副作用が少なく、安全性を担保できると考えています。PD-L1がANK療法の治療効果予測に有用である可能性があります。
(医療法人えびのセントロクリニック 副院長 医学博士 長井賢次郎先生)

Kenjiro Nagai MD PhD and Sho Nagai MD PhD CMJ Review Article Vol. 5 Issue S5

Effectiveness of Amplified Natural Killer (ANK) Therapy for Adult T-cell Leukemia/Lymphoma (ATL) and Future Prospects of ANK Therapy.

PMCID:PMC8986168

Amplified Natural Killer(ANK)療法は、1980年代にアメリカで行われたLymphokine Activated Killer(LAK)療法の安全性と有効性を高めるために改良された免疫細胞療法です。LAK療法は1990年代に日本でも行いましたが大量の血液を採取することができず、アメリカで行われたものよりもNK細胞やリンパ球が少なかったため、効果に乏しくまた副作用が多く出現しました。そのため日本ではこのタイプの免疫療法へのネガティブなイメージがついてしまい広まらなかった経緯があります。

リンパ球バンク株式会社が培養技術を持つANK免疫細胞療法は以前行われていたLAK療法のよい点と欠点を見抜き改良を加えており、今までの免疫療法とは一線を画した治療にしています。患者自身の血液が血液成分分離装置を2周するほどの量からナチュラルキラー(NK)細胞を多量に集め、実際に効果のある活性化したNK細胞のみを増幅し患者の体内に戻すことで効果的な治療と安全性を担保しています。ANK免疫細胞療法は、一般的にすべての悪性新生物(がん)に対して有効です。

今回紹介した2例と他の治療例から、現時点の症例検討でもANK免疫細胞療法はATLに対して非常に安全で、かつ有効であることを示しています。さらにATLの第一選択治療は化学療法ではなく、ANK免疫細胞療法になる可能性が高いという研究結果が出ています。

case2の報告でわかる通り、大まかにいえば免疫が低下して起こすような疾患(慢性感染、重症肺炎)に対して免疫力を増強する効果のあるANK免疫細胞療法ががん以外でも効果がでる可能性を示唆しています。
活性の低いNK細胞は、細菌感染への機会増大を意味します。従って、活性化されたNK細胞を大量に使用するANK免疫細胞療法は、ATLやがんだけでなく慢性的な細菌やウイルスの感染症患者にも有効となり得ます。

(医療法人えびのセントロクリニック 副院長 医学博士 長井賢次郎 先生)

Nagai K, Nagai S, Hara Y. BMJ Case Rep 2021;14:e244619. doi:10.1136/bcr-2021-24461

Successful treatment of smouldering Human T cell Leukemia Virus Type1 associated bronchiolitis and alveolar abnormalities with amplified natural killer therapy

ANK療法は、先ず、患者さんの血液からリンパ球を分離採取し、抗がん作用を高めるための培養を行います。
次に、がん細胞を傷害する能力を高め、数を増やしたナチュラルキラー(NK)細胞を体内に点滴する事で治療が始まります。
今回、私たちがANK療法を実施したのは、成人T細胞白血病くすぶり型と診断され、 ウイルス(HTLV-1)による気管支肺胞障害(HABA)がある81歳の女性患者にANK療法を行いました。
治療内容は、培養後のNK細胞を点滴にて週2回、合計8回実施しました。
その後、CTスキャンにて両側の びまん性粒状陰影の改善と全体の呼吸機能、そして患者の自覚症状が顕著に改善を認めました。また、ANK治療は通院にて実施しましたが、重篤な副作用は認めませんでした。
ANK療法は、高齢で化学療法が施行できない患者でも安全に治療でき効果も期待できる治療です。また、HABAの新たな治療法の一つになり得ます。
(医療法人えびのセントロクリニック 副院長 医学博士 長井賢次郎 先生)

Teshigawara K, Nagai S, Bai G, Okubo Y, Chagan-Yasutan H, Hattori T. MDPI Reports 1(2):13, 2018. doi:10.3390/reports1020013

Successful Amplified-Natural-Killer Cell (ANK) Therapy Administered to a Patient with Smoldering Adult T-Cell Leukemia in Acute Crisis

標準治療が確立していない難治性の成人T細胞白血病(ATL)の患者で「くすぶり型」と診断されていた状態から急性転化した時期にANK免疫細胞療法を実施し急増していた腫瘍マーカー(sIL-2R)が下がって安定し、皮膚症状なども消え、ATLではない疾病でご逝去されるまで5年以上生存。他に4名の長期生存例あり。

わかりやすい説明として、新聞社の取材記事をご覧ください。
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肝胆膵2007年11月号

医療法人蘇西厚生会 松波総合病院(岐阜県・羽島郡)は肝移植後のがん再発予防としてANK免疫療法が有効と、学術専門誌「肝胆膵」にて発表。
症例6は、肝臓がんが進行、一部が破裂し、腹腔中にがんが飛び散り、手術や放射線治療は一切、適用できない状況だった。患者は、海外で肝臓器移植を受け、術後管理を松波総合病院が行った。拒絶反応防止のため、免疫抑制剤を投与するが、免疫を抑制すれば再発リスクは増大する。実際、何度も再発・切除手術を繰り返した。そこで、がんの再発防止目的でANK免疫療法を実施したところ、腫瘍マーカーがほぼゼロに低下、3年を経過しても、再発の兆候がみられず。再発防止効果を判定するには、長年の経過観察が必要だが、本症例は短期間で、再発を繰り返すがんを抑えたもので、ANK免疫療法による顕著な防止効果の証明となっている。
現在、既存の治療法ではがんの再発に対して有効な決め手はない。本症例によってANK免疫療法が「がんの再発予防」の治療法となることが期待できる。
なお、本症例では診断後15年以上経過観察を継続しても再発は確認されていない。