TOP>免疫チェックポイント阻害薬二ボルマブ(商品名:オプジーボ)等との併用について

一部メディア等が、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)等を「夢の新薬」と報道し、この薬を投与すれば、たちどころに、「がんが治る」と信じてしまわれる患者さんもいらっしゃるようです。 実態は、そこまで切れ味の鋭い「魔法のような効き目」ではありません。もちろん、延命効果が確認されたため、承認を取得したのですが、効果といっても、一部の部位に限って、3割弱の患者さんに、概ね「不変」(症状が進行しない状態を維持する)期間が見られたというもので、この薬でたちどころに、腫瘍が消え去り、「治る」わけではありません(効果がでやすい部位の場合でも、7割の患者さんには何の効果もみられませんでした)。
一方、重篤な自己免疫疾患の発生が報告されています。筋ジストロフィーや、重症筋無力症、I型糖尿病、サイトカインストームによるDIC(播種性血管内凝固症候群)、間質性肺炎、あるいは心筋炎など、かなり重篤なものが報告がされています。発生率は概ね1割に近いと言われています。薬に副作用はつきものですが、効果の威力や可能性と、副作用の重篤さや発生頻度を鑑みて、メリットとデメリットのバランスを冷静に見つめる必要があります。
ニボルマブと免疫細胞療法を併用した患者さんが心筋炎で亡くなられたとの報告があり、厚生労働省からも、併用の安全性は確認されていないことを周知徹底する旨、注意喚起がありましたが、その後、ニボルマブそのもの副作用として、心筋炎の発症リスクがあるとされました。
ANK療法実施医療機関の中には、免疫チェックポイント阻害薬を、保険適応外にて、自由診療として処方することを妥当と考えるところはないようです。
そもそも、ニボルマブについては、悪性黒色腫や、腎がんでは、3割弱の患者さんに延命効果を示しましたが、他の部位では、なかなか効果が確認できていません。
非小細胞肺がんに対する効果については、盛んに議論されていますが、米国での治験では、延命効果を発揮した率は1割程度でした。国内では、概ね2割程度の患者さんに延命効果がみられるとされています。また、殺細胞剤(日本でもっとも代表的な抗がん剤)が効かなくなった患者において、ニボルマブが延命効果を示したのに対し、未治療患者、つまり抗がん剤を投与していない患者の場合、二ボルマブは延命効果を発揮しないという結果がでています。
大腸がんや前立腺がんでは、ほとんど効果が見られていません。
効果を発揮する部位が限られている上、重篤な副作用が発生しやすい薬剤の場合、保険診療機関において、副作用の説明を十分に受けられた上で、保険診療として投与を受けられるのが筋で、保険適応になっていない部位に、自由診療で処方するのは、妥当な考え方ではありません。
他院で、ニボルマブを処方された患者さんの場合、ANK療法実施医療機関としては、ANK療法の併用が特にリスクを増大すると考えている訳ではありませんが、ニボルマブ自体の副作用の発生時期に、ANK療法の治療時期が重なる可能性は否定できませんので、併用と考えられる時期にANK療法を実施することには、非常に慎重となっています。ニボルマブを投与されると、ANK療法を受診できない可能性があることも、考慮ください(詳細は、ANK療法実施医療機関にご相談ください)。
投与量を減らせば、安全であるとする主張もあるようですが、実際に、投与量を減らすことで安全になるかどうかは確認されていません。逆に、投与量を減らせば、効果は減じることは確認されています。
免疫チェックポイントというのは、いくつも知られています。現在、続々と免疫チェックポイント阻害薬や、刺激薬、また、これらに、ADCC活性(NK細胞の攻撃効率を高める作用)を付加したものなどが開発中で、承認申請中や承認待ちのものもあります。
今後の品揃えが進む中で、適切な使用法が模索され、治療の選択肢が広がることを期待しています。

  • *二ボルマブは、基本的にT細胞を漠然と活性化させる効果があるようですが、T細胞には、正常細胞を攻撃するものも多く含まれ、自己免疫疾患を起こすことがあり、実際に、その通りに副作用として報告されています。
  • *二ボルマブをはじめとするいくつかの免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞表面のPD-1という物質と、がん細胞表面のPD-L1が結合すると、T細胞の活動を抑制するシグナルとなるので、薬で、両者の結合を阻害し、結果的にT細胞の活性化を図るとしています。ところが、PD-L1は、心筋や肺をはじめ多くの正常細胞にもみられるもので、がん細胞特有のものではありません。当然、普段は免疫抑制信号を発して、T細胞の攻撃を免れている正常細胞の防御も弱め、自己免疫疾患を招くリスクがあると想定され、実際に、発生報告がなされています。
  • *がん細胞を正確に認識し、攻撃力が強いNK細胞を活性化させる方が理に適っているのですが、NK細胞の制御は非常に複雑であり、単純な薬剤を体内に投与するだけで、本格的に活性化させるのは容易ではありません。
  • *二ボルマブが効果を発揮する部位が限定されていることの説明として、悪性黒色腫や、腎がんの場合は、遺伝子変異の蓄積が他の部位のがん細胞よりも多くみられ、T細胞から見て、異常細胞と認識しやすいのではないか、そのため、他の部位のがんでは、それほど効果が期待できないのであろう、という説があります。

体内の免疫制御システムは非常に複雑です。薬剤を体内に投与することで、都合よく、がん細胞を攻撃する免疫細胞だけを活性化できればいいのですが、正常細胞を攻撃する余計なT細胞まで目覚めさせてしまうなど、そう簡単にはいかないのが現実です。
免疫細胞療法は、複雑な免疫制御システムの影響が及ばない体の外に、一度、免疫細胞を取り出し、体内よりはるかに単純で、「見えやすい」環境下で、より確実に、がん細胞を傷害する免疫細胞の活性化や増殖を狙うものです。
NK細胞の場合は、増殖が遅いため、数をそろえるためには、体内から大量(血液数リットル相当)に採り出す必要があり、野生型のまま活性化し、増殖させれば、あとは本来の機能通りに、がん細胞を特異的に(狙い撃ちで)傷害することが期待できます。NK細胞は多種多様なセンサーでがん細胞と正常細胞を正確に見極める点が、正常細胞を攻撃し、自己免疫疾患を招くリスクのあるT細胞とは大きく異なるポイントです。
T細胞の場合は、増殖力は旺盛なのですが、体内のがん細胞を傷害するキラーT細胞(CTL)は、ほんのごく一部に過ぎないため、ANK療法実施医療機関では、患者体内から取り出された腫瘍細胞を実際に攻撃するCTLを選択的に大量増殖させて治療に用いています。
様々な新薬が開発されることを期待していますが、免疫細胞療法を行うには、それだけの科学的な根拠があるのです。