TOPがんの進行と標準治療>がんの診断技術はまだまだ稚拙

医療が進歩した、と言いますが、未だに、体内の正常細胞とがん細胞を確実に見分ける技術は存在しません。確定診断のためには、体外に、「がんと思われる」組織を取り出して、病理検査を行う必要があります。

がんは、腫瘍組織を手術やバイオプシー(生体検査)により取り出し、病理の専門医が病理検査を行った時点で確定診断が下り、それまでは、「がんの疑い」と考えられています。病理検査では、腫瘍組織やがん細胞の性質が詳細に調べられます。専門のサイトでも紹介されていますので、ここでは、重要なポイントのみを強調させていただきます。

がんという病気を、部位やステージのみならず、
増殖能力や転移能力、全身に広がろうとする勢いで捉えることが重要

病理検査では、個々のがん細胞や、腫瘍組織の形状から、転移・増殖能力を判断することもできます。また、がん細胞個々の遺伝子や、細胞表面物質の多寡なども検査できます。転移に関連する遺伝子が活発に活動しているかどうか、といったことも検査可能ですが、重要なのは、治療の選択の判断のもとになる検査です。何かが分かったとしても、それで治療の選択肢は変わらない、のでは臨床上の意味はありません。

例えば、細胞増殖因子を受け止めるレセプターの一種、「HER2」が大量に発現していれば、増殖が早い危険ながんと考えられ、一方で、HER2を標的とする抗体医薬品ハーセプチンの使用が効果的とも考えられます。(保険適用になるかどうか、ということと、科学的に、使用が好ましいと判断されるかどうかは、別次元の問題です。たとえ、HER2抗原を過剰発現するがん細胞であっても、発生部位などが保険適用条件に合わなければ、健康保険は使えません。なお、HER2抗原に関しては、病理検査以外の方法として、血液中に溶出しているHER2抗原の濃度を測定することも、技術的には可能です。)

病理検査では、がん細胞と免疫細胞の相性を調べることも技術的には可能ですが、一般には行われていません。治療設計にあたって、病理検査で得られる情報は、他の如何なる検査よりも圧倒的に多いのです。問題は、手術時以外、標本を取る機会が限られる、ということです。生体検査(バイオプシー)は、場所によっては困難なことが多く、また、悪性度の高いがん細胞が検出されなかったとしても、それは、標本を取った位置が、病巣からずれていたに過ぎない可能性もあります。血液のがんなどでない限り、体内から、がん細胞を取り出すのは、患者さんへの負担が大きく、そう何度もできないか、全くできない場合もあります。手術するまで、がんの正体が分かり難い、また、手術後のフォローにおいて、確実な診断を下す手段がないのが実態です。結局、完全寛解後、つまり、現在の技術をもってしては、「がんがあるのかどうか分からない」状態になってから、5年生存もしくは、無憎悪増殖期間という言い方をしますが、要するに、明確な再発の兆候がない期間が5年以上、継続したことをもって「治癒と看做す」しかないのです。ただし、再発までの期間が1年程度の胃がんや、15〜20年かけて再発するケースが見られる乳がんなど、5年という期間は明らかに不適切という場合もあります。