TOPこんなに違うANK療法>その他の免疫(細胞)療法との比較

NK-T細胞や、γ/δT細胞を用いる療法もあります。これらは、NK細胞とT細胞の中間的な性質を持つ、あるいは、NK的な性質をもつT細胞とも言えます。中途半端な性質ゆえに普及していない、ということではないでしょうか。どちらも末梢血中に僅かしか存在せず、体内をパトロールして、がん細胞を見つけ次第、攻撃する免疫監視機構の主役とは考えられません
どちらの細胞も、がん細胞を傷害することは確認されています。
NK細胞の本格培養は一番難易度が高いため、まず、γ/δT細胞療法を実用化、次がNK-T細胞療法で、最後に本格的なNK細胞療法の開発を目指す、としているところもあります。一方、各地のクリニックが独自に参入するには手間がかかり、原価が高く、何でもいいから免疫細胞療法というところは、わざわざ手を出さない、ということではないでしょうか。
NK-T細胞については、NK細胞と似た性質をもちながら、かつNK細胞よりは培養が容易ですので、以前、私どもでも、治療メニューに加えることを検討しました。ところが、がんを攻撃するパワーは、NK細胞より遥かに劣り、また、免疫刺激作用が弱いのが弱点です。単独で用いれば、強い免疫抑制状態にある患者体内に戻した時点で、直ちに活性が落ち、役に立たなくなると考えられます。ANK療法と併用し、強力に免疫が刺激されている状況下なら援軍になる、と考えましたが、そのためにわざわざ培養コストをかけるのであれば、CTLという別の免疫療法を併用するか、あるいは、もっとシンプルにANK療法の回数を増やした方が高い治療効果が得られる、と考え、治療メニュー化は見送りとしました。
γ/δT細胞もNK細胞と似た性質をもち、弱いながらもADCC活性、つまり抗体によって、がん細胞を攻撃する力が強まる性質を持つ可能性があります。(CD56というNK細胞が沢山もつレセプターがあり、このCD56が、抗体のFcフラグメントという部分に結合するのですが、γ/δT細胞にも、微弱ながらCD56を持つシグナルが検出されています。抗体に結合するから必ずADCC活性を持つという保証はありません。)但し、免疫刺激が弱いため、単独で用いるとNK-T細胞療法と同じく、患者体内の強い免疫抑制下で機能しなくなると考えられます。
なお、NK-T細胞は喘息、γ/δT細胞はリューマチ、いずれも自己免疫疾患の発症に関連していると考えられています。
樹状細胞療法やペプチドワクチンについては、ANK療法と直接比較することはできません。何故ならば、これらは、がん細胞を攻撃することを確認されていないからです。
ちなみに、ペプチドワクチン療法とは、合成された人工ペプチド抗原を直接体内に投与するもので、「医薬品」と看做されます。樹状細胞療法は、いくつかバリエーションがありますが、よく行われているのが、樹状細胞に人工ペプチド抗原を与え、その後に、細胞を体内に戻すものです。ペプチドは医薬品であるため、大手医薬品メーカーが参入を表明しており、開発資金を得やすい状況になっております。
樹状細胞や、ペプチドワクチン、或いは、ペプチドワクチンを感作させた樹状細胞などを、がん細胞と一緒にしても、何も起こりません。これらは、直接、がん細胞を攻撃するものではありませんので、ここまでは当然です。
さて、「樹状細胞やペプチドワクチンは、がん細胞の抗原情報をキラーT細胞に伝え、そのキラーT細胞が、覚えた標的をもつがん細胞を攻撃するCTLになるのである」、とする説があります。しかし実際は、樹状細胞やペプチドワクチンを用いなくても、ある条件に合ったキラーT細胞を、がん細胞(MHCクラスIを持つものに限ります)と一緒に培養すれば、自然に「本物の」CTLが育ってきます。こうして育てたCTLは、「覚えた」標的と同じ性質をもつがん細胞を実際に攻撃します。
樹状細胞と一緒に培養したキラーT細胞が、本当にがん細胞と型が合うCTLになるのであれば、その「CTL」を標的がん細胞と一緒にした瞬間、直ちに、そのがん細胞を攻撃するはずです。ところが、そのようなことは起こりません。免疫抑制の影響を受けにくい、体外培養においても、がん細胞を攻撃することを確認できないのですから、ましてや、強い免疫抑制下にある患者体内に、樹状細胞やペプチドワクチンを投与して、何故、キラーT細胞の「教育」ができるのか、科学的な説明はなされていません。
知名度や、メディアでの露出においては、樹状細胞や、ペプチドワクチンは「有名」です。ところが、科学的には、NK細胞や、NK-T、γ/δT、及び、直接がん細胞で「教育」したCTL、こうした(活性を高めた)キラー細胞が、がん細胞を傷害することが確認されているのに対し、樹状細胞やペプチドワクチンを用いる手法は、本当に、キラーT細胞を、がん細胞を攻撃する細胞に変化させるのか、根拠が明確ではありません。

NK細胞と樹状細胞の性質の違いを表にまとめてみましょう。

 

ナチュラルキラー(NK)細胞

樹状細胞

体内の分布

全身に分布、常時、移動

消化官・皮膚の基底部などに固着 血液中にはいない

体内での機能

がんに対する免疫監視機構の主役など

感染症に対する防御システムの制御など

認識システム

多種多様のセンサー KAR / KIRを大量発現し、如何なるがん細胞でも正確に認識する

10種類のTLRを発現し、如何なる菌・ウイルスでも、認識する
がん細胞を認識するセンサーはもたない

攻撃力

がん細胞を直接、傷害する

がん細胞を直接、傷害はしない

免疫刺激

大量のサイトカイン放出により、免疫レベル全体を底上げし、他の免疫細胞の動員を促す

菌・ウイルス等の異常増殖を探知すると、抗体を産生するB細胞やウイルス感染細胞を排除するキラーT細胞などに動員を促す がん細胞には余り反応しない

培養方法

血液中から採取し、そのまま活性化・増殖させる

血液中には殆ど存在しない その為、一般に、末梢血より単球を採取し、体外で人為的に樹状細胞に分化誘導させる (体内で成熟した樹状細胞と同じ性質を保つという保証はない)