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2008年11月11日

  

免疫

2008.11.10. 自然免疫の最終的な武器は分解酵素ばかりではありません。獲得免疫系と共通のものも多いのですが、どういう爆弾をもっているか、整理してみましょう。 まず補体というものが体中に存在します。 一種類の物質ではなく、数十種類の物質のグループなのですが、活性を抑えた状態で血液中に大量に存在し、更に補体の活動を抑制する物質が大量に血液や細胞表面に存在します。 やはりここでも大量の武器弾薬を用意しておき、かつ暴発を抑えるブレーキも強力にかけておく、というパワーとパワーを拮抗させる状態となっています。 この補体、引き金をひかれると次々と連鎖的に化学反応を起こし、細胞を破壊してしまいます。 一旦、破壊力を解放すると、周辺一帯、相手構わず破壊するので暴走すると正常組織にも大きなダメージを与えてしまいます。 ただ病原菌が大量増殖している、など待ったなしの状況では敵味方お構いなく一斉に叩いてしまう絨毯爆撃として、威力を発揮します。 補体はある種の菌に接触すると自動的に活性化することもありますし、補体活性化作用をもつタイプの抗体によって、爆発スイッチを押されることもあります。 獲得免疫の項目で改めて説明しますが、抗体は大半が、ただ抗原にくっつくだけで、むしろ抗原を保護する抗体と申し上げましたが、それ以外にも補体を活性化させるもの、ADCC活性といってNK細胞を強く刺激するもの、凝集活性といって赤血球をくっつけ固めてしまうもの、等、いくつかの攻撃タイプがあります。ADCC活性の場合、抗体が結合しているか否かで、NK細胞の攻撃の激しさに差がでますが、かといって攻撃する相手かどうかを見誤ることはありません。 抗体が結合しているからがん細胞だ、と認識しているのではなく、抗体が結合していてもいなくても、相手が正常細胞か、がん細胞かを見分けます。 ところが補体の方はそうはいきません。 補体活性化作用をもつ抗体が抗原に結合している状態の時、相手の抗原が何物かに関係なく補体を活性化させ、絨毯爆撃となります。 抗体を医薬品として、がん治療に使う場合、ADCC活性を活用してNK細胞にがんを殺してもらうことを期待するのが基本ですが、中には補体に期待するもの(CDCC活性)もあります。 また抗体の構造の一部を修正し、ADCC活性を自然な状態の100倍に増強するポテリジェント技術が注目され、実際に米国の臨床試験では従来の100分の1の量の抗体でも従来と同等のがん治療効果が確認されています。 NK細胞を強烈に刺激するポテリジェント技術には大いに期待しております。 一方、コンプリジェント技術というCDCC活性を100倍に増強する技術も開発されています。 これはどうなるんでしょうね? ANK療法と直接は関係ないのですが、補体は相手を選びませんし、抗体だって、がん細胞だけに特異的に結合するものはありません、正常細胞にも結合します。がん細胞が特別、沢山発現している抗原を狙う、ということなんですが、細胞の数からいうと、正常細胞の方が圧倒的に多いので、方々の正常細胞に抗体が結合し、方々で補体が活性化され、絨毯爆撃の嵐になる、ということにならなければいいのですが。 そろそろ長くなってきましたが、補体の他には、貪食作用、これはやっぱり消化ということになるのですが、酵素を吐き出すのではなく、バクテリアやウィルスをマクロファージや好中球が取り込んで、細胞内に小さな細胞膜とほぼ同じ性質の膜で包んだ小胞体の中に閉じ込め、その小胞体に分解酵素をぶっかけるというやり方です。 また、スーパーオキサイドもよく使われます。普通の酸素よりも、ずっと反応性の高い状態の酸素です。スーパーオキサイドは様々な場面でつくられますが、これもまた、相手を選ばず、強力に酸化作用で破壊(変性)してしまいます。 人体は実はよく燃えるのですが、私たちの体は、燃料の塊でもあるのです。 そして体内には燃料を燃やす酸素もあり、スーパーオキサイドは通常の酸素より更に激しく燃料を燃やします。 私たちの体は大量の燃料、爆発物と、強力な酸化剤が同居しているような状態なのです。 さて、スーパーオキサイドこそ老化の原因物質だ、とか、炎症の元だ、ということで、スーパーオキサイドを分解する酵素や、活性水素を大量に含んだ水、ビタミンCなどの還元剤を大量投与、、、、 スーパーオキサイドを抑える健康食品などがよく売れています。 炎症を抑える意味がある場合はいいのですが、スーパーオキサイドは免疫系において、異物・不要細胞除去の強力な武器の一つですでの、みさかいなく常時、スーパーオキサイドを抑え続けるのは如何なものかと存じます。 これが善なる物質で、これが悪なる物質、という単純な図式ではないのです。 ええ、肝心のNK細胞がもってる爆弾の話をしなかったですが、それはまたの機会に。 

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