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2013年02月01日

  

えとせとら, 免疫

2013.2.1.
 
 
米国から輸入された鼻にスプレーする
インフルエンザワクチンは、効くのでしょうか?
という、ご質問をいただきました。
 
実際にどうなのかは、やってみないとわからない、
もっとも、ワクチンの場合は、効果証明が難しいので
やってみてもわかりにくいのですが、腕の皮下や筋肉に
注射するワクチンよりは、「筋はいい」と答えました。
 
米国で承認されたNasal 経鼻ワクチンは、感染力をもった
生ワクチンです。 温度感受性が異なる悪性度の低い
ウイルス遺伝子と、病原性の高いウイルスの表面抗原を
コードする遺伝子とを、「混ぜた、、、?」 ううん、、、ごちゃ混ぜに
したということではなくて、インフルエンザのウイルス遺伝子は
いくつかのセットに分かれているので、性質の異なるウイルスの
セットを組み合わせて、人工的に作り直したもの、です。
 
生ワクチンは、感染防止効果ということでは、不活化ワクチンより
はるかに高いのが一般的ですが、感染防止といっても、「弱毒性の
ウイルスに感染する」のが生ワクチンの本質ですから、厳密にいうと
病原性の強いウイルス株に対する感染防止効果、ということです。
 
また、ワクチンは、感染経路に沿って投与すべし、これも原則です。
 
気道上皮粘膜で感染と他者への伝染が成立するインフルエンザウイルスに
対して、皮下や筋肉にワクチンをうったところで、影響を及ぼすのは難しいのです。
だいたい、何でも腕に注射すればいいような常識が定着してしまいましたが、
ウイルスの多くは粘膜から入ってくるのですから、当然、ワクチンも
粘膜に接種すべきです。 
生ワクチンの場合、体のどこに接種しても、体内でワクチンウイルスが
増殖し、ワクチン効果を発揮することがありますが、不活化ワクチンの場合、
皮下や筋肉注射では、一般に液性獲得免疫、つまり抗体をつくるだけ、
それも、血液中に中和抗体をつくるだけです。
抗体はウイルス感染を防止する主役ではなく、
ましてや、中和抗体では今一つ威力がなく
さらに血中抗体では、粘膜感染を防ぐことはできません。
 
ワクチン効果を持続させるには、細胞性免疫を誘導する必要があります。
この場合は、CTLが活躍します。 がん細胞に対してならNK細胞が
圧倒的に強いのですが、ウイルス感染細胞を退治するのは
CTLが主役です。 細胞外にいるフリーのウイルスは、
液性自然免疫の働きにより、分解酵素
などで、バラバラにしてしまいます。
ウイルスは体内では非常に不安定ですが、
人間の細胞に感染し、その中に遺伝子として
存在すると厄介となり、感染した細胞を殺すしか
ありません。
 
たとえば、感染防止効果が高い、はしかのワクチンの場合、体内で
はしかのワクチンウイルスが活動を継続します。
結果的に、細胞性免疫も誘導されますが、血液中に
中和抗体もでてきます。
ウイルスは、中和抗体が存在する体内でも
ごく正常に活動を続けます。
つまり、血液中の中和抗体というのは
体内でウイルスが無事、活動していることを示す
バロメーターなのです。
生ワクチンの効果持続を判定する間接的な指標として
血液中の中和抗体は使えるのです。
 
ところが、血液中の中和抗体価を効果判定として
永年、用いているうち、ワクチンというのは、血液中の
中和抗体を誘導すれば、それでいいんだ、という誤解が広がります。
これは日本だけの特徴ですが、日本では、血液中の中和抗体を
誘導したから、このワクチンは効果あり、と判定してきた歴史が
あるのです。
 
実際には、不活化ワクチンの接種では、細胞性免疫の誘導は
難しいことが多く、単に、血液中の中和抗体を誘導するだけに
終わりますので、「効果ありと判定」された不活化ワクチンを
接種しても、全然、感染症の流行を防げない、ということになって
しまいます。
 
インフルエンザワクチンが効かない理由は、型の読みがはずれる
だけではありません。 そもそも、不活化ワクチン自体の
本当の効果が今一なのです。
 
試験管の中で、大量の中和抗体とウイルスを混ぜると
確かに、ウイルス感染を阻害しますが、それは極端な比率で
混ぜた場合の話。 体内で同じ効果を生じるわけではりません。
しかも、中和抗体が結合したウイルス粒子は、
エンドサイトーシスという仕組みによって、細胞内に
取り込まれてしまい、非常に低い確率ながら、ウイルス遺伝子が
細胞内で増殖するリスクもあります。
そもそも、ウイルス遺伝子が存在すると、確率は相当、低いのですが
トランスフェクションという現象によって、直接、ウイルス遺伝子が
細胞内にとりこまれ、遺伝子の複製、つまり増殖を始めるリスクさえ
あります。 何のことはない、不活化されたはずのウイルスでも
遺伝子が残っていると、体内でウイルス粒子として
復活するリスクもあるのです。
 
さて、さきほどの経鼻生ワクチンの話に戻しますと
生ワクチンである以上、体内で増殖するうちに、強毒化するリスクは
あります。 特に、ウイルスは活発に遺伝子を組み替えますので、
感染部位の体温で活発に増殖するタイプのウイルスがポツンと
いただけで、たちどころに、遺伝子の組み換えがおこり、増殖力を
高めたウイルスがあっという間に増える可能性があります。
 
生ワクチンの方が効果が高いことはわかりきっていても
どうしても不活化ワクチンの開発に力を注ぐのは、
生ワクチンには、リバータント、再強毒化のリスクが残るからです。
はしかのウイルスは、人間を宿主とするウイルスで、人体内で
非常に安定です。ですから、安定な生ワクチンがつくれるのです。
インフルエンザウイルスは、鴨を宿主とするウイルスで、鴨の体内では
非常に安定です。また、ほとんど病気をおこしません。
これが人間の体内に入ってしまうと、居心地が悪いのか、必死に
抵抗し、病状を発症し、そして、盛んに変異します。
だから、インフルエンザの生ワクチンはつくらないのが基本なのです。
 
経鼻である点は、OK
不安定なウイルスの生ワクチンである点は、XXX
 
私だったら、使いません。
 
 
インフルエンザの場合、どうしてもワクチンを使うのであれば、
まず、生ワクチンは危険。
不活化ワクチンは効きにくいので、
せめて、経鼻、つまり鼻の粘膜に直接スプレーするタイプ。
かつ、遺伝子が存在すると取り込みリスクがあるので、
ウイルス由来の糖タンパクのみを用いる。
ところが、たんぱく質だけでは、抗原性が弱いので
免疫細胞に認識されやすい、喜田先生(人獣共通感染症センター)
が開発されたカセットセオリー型のものを用いる。
ウイルスが盛んに変異しても、この部分は安定な部位というのがあります。
そこが変化してしまうと、もはやウイルスとして
機能できない重要な部分です。
コアな部分は、ずっと変化せず、
どうでもいいところはコロコロ変化し、
盛んに変化させる部分を突き出して
目立たせ、免疫系に見せるのです。
喜田先生は、ウイルスの各基本型の安定部位を見つけておられ
かつ、安定部位を挟み込むようにして、免疫系から見えやすくする
シグナルペプチドの一種をみつけ、基本カセットとして用意して
おられます。 生ワクチンではないので、効果がどれだけ持続するかは
疑問ですが、短期的には、インフルエンザの変異に影響されずに
効果を発揮するワクチンとなるはずです。 
(培養しなくていいので、流行中の基本型を、標準カセットに
はめてつくればいいので、即時量産が可能ですし、備蓄も可能です)
 
 

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