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2018年01月17日

  

えとせとら

2018.1.16.

 

三菱ケミカルホールディングスのグループ会社である生命科学インスティテュート社が、急性心筋梗塞の2次予防を適応として探索的臨床試験を開始すると発表しています。

ミュース細胞というのは体の中に備わっている幹細胞の一種です。受精卵やES細胞は1個の細胞から「人間」になることもでき、iPS細胞も様々な組織をつくることができます。ミュース細胞はそこまで「どんな細胞にでも化ける」とはいきませんが、ある程度幅広く様々な組織の細胞の化けることができる中間的な存在ということになります。

この細胞は静脈へ注射しておくと血液を巡り損傷部位にたどりつき、そこで損傷している組織をつくる細胞に化けて細胞数も増やし「修理」をします。絶対にそうだとはいえませんし、修理不能な場合もあるでしょうし、治療の実用性を考えるとまだまだやってみないとわからないのですが、一言でいうと「理に適っている」ものです。

で、やってみたところうまくいかない、という可能性もありますが少なくともでたらめに何の根拠も蓋然性もなくやっているものとは大違いで科学的な背景と実用性の「匂い」はします。

これでうまくいくなら体の外での培養によって時間とコストをかけて組織をつくり、手術で戻す必要もなく、ミュース細胞の数やら状態やらを整えて注射すればあとは勝手に自分で仕事場をみつけて修理をしてくれます。副作用というのは絶対ないとはいえませんが、血液中を体性幹細胞が移動するというのは日常的にあることであり、培養段階でがん化を促すような無理な刺激をかけていなければ「原理的に安全と考えられるだろう」ものです。あとはやってみないとわかりません。

NK細胞やT細胞は成熟した細胞で少々、刺激しても他の細胞に化けることは通常なく、よほど遺伝子改変でもしなければがん化することもありませんが、幹細胞というのはがん幹細胞の親戚でもあり、本来の性質からして化けるのが仕事ですから化けやすいので、がん化しないように注意は必要ですが、iPS細胞のような遺伝子改変をやっていないのではるかに安全性は高いと考えられます。

心筋梗塞の場合、冠状動脈が詰まるとまず穴をあけ、詰まったものを除去するなり、血管を広げる措置が行われますが、その後、そのまま無事な方、新たな血管が新生してバイバスをつくり助かる方、再び血管が詰まる方などいくつかの経緯をたどります。 そこへミュース細胞を投入して損傷組織の修理が行われれば再発予防になる、と理屈は通っています。

この場合、冠状動脈の血管壁も傷んでいますし、血液がこなくなった心筋も一部傷んでいることがあります。どちらにしても速やかに修理が行われるのは予後の改善につながると考えられます。

先行する再生医療製品としてハートシートがあります。体の外でとりあえずいくつもの細胞が膜状に広がったシート状の組織をつくり、これを手術によって心臓に貼り付けておくと、ハートシートそのものが心臓の一部になるわけではないようですが、新たにかけつけた細胞集団に「支援」されて損傷組織が自己修復を早める効果があるようです。

 

どちらかが他方を圧倒する可能性もないとはいえませんが、よりローコストで汎用的なミュース細胞はそれだけ有効性が低い場合でもやってみる価値はあると判断される可能性が高くなり、組織培養を行ったうえで手術により移植する場合は、コストや時間、手間がかかり手術による患者さんへの負荷もかかる分だけ高い有効性が求められるということになります。

両方の技術がすみわけして生き残る可能性も十分あります。

 

 

 

 

 

 

 

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