TOPがんワクチン>活性を高めたNK細胞はがん細胞を見逃さない

免疫細胞の中でも、ナチュラルキラー(NK)細胞は、がん細胞と正常細胞の表面物質の分布パターンの違いを認識します。がん細胞が正常細胞と同じ物質を使っていても、騙されません。
活性を高めたNK細胞は、特に大量のセンサーを細胞表面に突き出し、がん細胞特有のわずかなシグナルを見逃しません。

キラーT細胞(CTL)も標的を教えれば、覚えた標的と同じ信号パターンを持つがん細胞を殺します。ただし、キラーT細胞(CTL)の教育は、患者の体内では難しく、体外で、目を覚ました状態で行う必要があります。
なお、標的は合成された単純なペプチド(アミノ酸が数個つながったもの)のようなものでは不十分であり、がん細胞を生きたまま、丸ごと与える必要があります。そうすることで初めて、キラーT細胞は、がん細胞の何十というシグナルを認識し、「あ、これが自分の標的なんだ!」と、覚えるのです。

がん抗原と考えられた物質を、患者さんに投与してみる、こうした試みは、過去、数十年間、幾度となく繰り返されてきました。がん細胞をすりつぶしたもの、がん細胞から抽出した物質、あるいは、抗原ではなくて、がん細胞に反応した抗体を投与してみる、、、、  いずれも、顕著な効果を示すことができません。こうした試みの中で、「がん抗原と考えられた物質」を、がん患者さんに投与し、「がん抗原に対する免疫反応を誘導する」ことを狙ったものが、「がんワクチン」ということになります。感染症予防を目的とするワクチンと同様、強い免疫刺激剤を一緒に投与するのが一般的ですが(アジュバントといいます)、アジュバント単独でも、ある程度の効果を示すことがありますので、当然ながら、アジュバント単独投与より、効果が高いことを証明する必要があります。

さて、整理しますと、がんワクチンと称されるものの多くは、特に政府の承認を取得したもの、などは、実態は、「ワクチン」ではありません。では、「がんワクチン」と考えられるものはというと、今のところ、これといった顕著な効果は示せません。がん特有の物質と考えられるものを、がん患者さんに投与するものは、がんワクチンということになるのでしょうが、実用レベルで、がん特有の物質と言えるものは見つかっていません(がんワクチンとして投与されている、WT−1という物質などは、いずれも、正常細胞にも存在します)。
また、多くが、単純なペプチドなどであり、「ペプチドなどの単純な構造をした生体物質は、体内では直ちに分解される」ため、免疫反応を引き起こすのは、そもそも無理があります。

さらに、「がん抗原」としている物質を、樹状細胞に認識させる、という「話」もよくありますが、樹状細胞は、細菌やウイルスがもつ「特定の物質」を認識するセンサーはもっていますが、「がん抗原」とされている物質を認識するセンサーはもっていません。

「ANK療法」は、「がん細胞を殺すのが得意なNK細胞が、患者さんの体内では眠っているので、体の外で、叩き起こし、数も増やして、がん細胞を攻撃する状態にしてから、体内に戻すもの」です。

非常にシンプルで明快です。

では、「がんワクチン」はどうなのか、というと、非常に「話」が長く、そのほとんどが、「それは無理でしょう」という問題を抱えています。

「がん」という言葉は誰でも知っています。
「がんと免疫」には、密接な関係があることは、知られるようになってきました。

では、「免疫の力で、がん治療」となるのですが、「免疫」といえば、「ワクチン」のイメージが強く、「がん」という言葉と「ワクチン」という言葉をつなげておけば、一般受けがいい、そのあたりが、「がんワクチン」の実態でしょう。

がん細胞を殺し、強い免疫刺激によって進行がんの根治を目指すANK療法と、延命やQOL改善を目指す一般の免疫細胞療法や、がんワクチンはそもそも目的とするところが異なります。

免疫細胞療法が医療行為であることに対し、がんワクチンは工場での量産が可能な「医薬品」であるため、健康保険の適用を申請する仕組みが整備されています。それ故に、大学で日々研究が進められています。

「ワクチン」という名前に馴染みがあるため、様々な免疫系治療に「ワクチン」という名称が使われているのが実態です。本文をもって、すべてのがんワクチンをカバーしているわけではありません。