TOP免疫はがん治療の主役>免疫療法の妥協

「コーリーの毒」より安全なものを求める研究が繰り返しなされました。ウイルス感染症に対するワクチンにおいても、同じことが行われました。やはり19世紀に開発された種痘は、人類が開発したワクチンの中では最も効果が高いもので、未だに種痘を越えるワクチン技術は開発されていません。種痘は、天然痘を発症する痘瘡ウイルスの感染を防止するために、ワクチニアウイルスに強制感染させる、というものです。痘瘡ウイルスとワクチニアウイルスは全く別物です。コーリーの毒と同じように、「ワクチンには、ウイルスの特異抗原は必要ない」、「何か、他のウイルスに感染させればいい」。こうして、実際にウイルスや菌を感染させる生ワクチンが実用化されました。がん治療においては、コーリーの毒より、毒を弱めたものが試され、ワクチンにおいては、生ワクチンに代わって、感染力を叩いたウイルスを投与する不活化ワクチン、更に安全性を追及し、ウイルス粒子の一部だけを投与するもの、合成されたペプチドを投与するものと、常に、安全性を求めた「改良」が行われてきました。結果は、感染防止効果は落ち続け、生ワクチン以外は、殆ど、実効的な感染防止効果がありません。

感染防止効果
生ワクチン > 不活化ワクチン > 分画化ワクチン(蛋白等) > ペプチドワクチン

コーリーの毒の「改良」として、激しい急性症状を起こす溶血性連鎖球菌の代わりに、免疫力が低下した人に日和見感染し、慢性症状を起こす結核菌を用いることが考案されました。結核に感染すると肺がんになり難いことが知られていたからです。ところが、生きた結核菌を強制感染させるのは危険すぎます。そこで、菌の毒性を弱めた上に、菌体の一部だけを投与する「丸山ワクチン」が開発されました。安全度は格段に高くなりましたが、ここまで危険度を下げた刺激では、免疫療法のジレンマにより、効果が激減します。溶血性連鎖球菌の毒性を弱め、凍結乾燥したピシバニールも開発されました。免疫刺激剤である、この薬は、発熱を伴うことがあります。そのため、免疫抑制剤である解熱剤と一緒に投与されてしまいました。これでは、効果が落ちるのは当然です。元々、コーリーの毒より、ずっと安全になっていますので、治療効果も、遥かに落ちることになります。