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がんの発生原因は諸説ありますが、発生以降については、概ね、イニシエーション(がんの発生)、プロモーション(緩やかな増殖)、プログレッション(急激な増殖)の三段階に分けられるという見方が定着しています。現代の技術では、1cm以下のがんを見つけることは大変、難しく、数mm以下ともなると、殆ど不可能です。がんが発見されるのは、プログレッション段階に入った後のことです。

近年、さまざまな部位のがんにおいて、がん幹細胞の存在が続々、確認されています。がん幹細胞はゆっくりとしか増殖しません。腫瘍組織が大きくなるには、様々な機能や役割に分化したがん細胞が必要ですが、これらは、すべて、がん幹細胞が細胞分裂により増殖する際に発生したのが源と考えられています。分化が進んだがん細胞が自身のコピーを増やすことで腫瘍組織が大きく成長しますが、一旦、分化が進んだがん細胞は、異なる方向への分化はしないため、再発や転移の中心にはなりません。がん幹細胞が再発や転移の源になると考えられています。 がん幹細胞は、放射線や化学療法では容易に死なないことが分かっており、かえって中途半端に遺伝子に傷をつけると、転移に関連する遺伝子が活発化するとされています。つまり、放射線療法や化学療法で転移を防ぐのは難しいどころか、下手をすると、転移を促進してしまう可能性すらある、ということです。

がんの進行について

現代の医療におきましては、がんの「治癒」という定義が存在しません。

標準治療は、がんの治癒を目指すものではありません。
進行がんは、治癒できない、という前提に立ち、一時的な「効果」を求めるか、「延命」を求めるものです。

治療効果の判定基準として、かつては「一時的な腫瘍の縮小効果」が用いられ、所定以上の縮小効果を発揮した率をもって、「奏効率」を算定しエビデンスとしておりました。実際、「化学療法剤」、つまり正常細胞とがん細胞を区別せずに攻撃するタイプの副作用が特別強い抗がん剤が、こうしたエビデンスに基き、健康保険の適用を受けてきました。 ところが、いくら新薬が承認されても、がんで亡くなる方は逆に増え続けました。 米国を中心に、効果判定基準がおかしいのではないか、と議論が起こります。一時的な腫瘍縮小効果を発揮しても、再発・転移による予後が悪く、患者生存期間の延長に寄与していないのではないか、との疑問が提示されました。

今日では、「縮小効果による奏効率」に代わって、「延命効果」が、抗がん剤の効果判定基準として用いられています。末期進行がんの患者さんにおいて、既存の抗がん剤を投与したグループと、既存の抗がん剤+新薬を投与した場合を比較し、どれだけ生存期間が延びたか、を判定するものです。例えば、前者の余命が14.5ヶ月に対し、後者の余命が16.1ヶ月であれば、1.6ヶ月の延命効果を認められ、承認となります。

典型的な延命効果試験の結果

患者生存率

患者生存率グラフ

実は、最新の抗がん剤のエビデンスといっても、せいぜい2〜3ヶ月以下の延命効果を示しているに過ぎません。しかも、標準治療を受けなかった場合との比較試験は行われていません。科学的には、問題の多いエビデンスということになります。

* 「標準治療は正しい」という前提があり、新しい治療法を審査する場合、「標準治療との併用」を条件にされてしまいます。
このような新薬の判定基準を免疫細胞療法の評価基準に適用することは無理があります。かつて、丸山ワクチンが、化学療法剤との併用により治験を実施され僅かの効果を示したのみに終わりました。免疫刺激効果を狙う療法と、免疫系に打撃を与える治療法を併用したのですから、試験の設計自体に問題があります。現時点におきましても、NK細胞を刺激するADCC活性を作用メカニズムとする抗体医薬品が、NK細胞を叩いてしまう化学療法剤との併用によって治験が行われています。「化学療法剤との併用」この固定された考え方を改めない限り、免疫細胞療法がフェアな評価を受ける治験を設計することはできません。
免疫細胞療法にはエビデンスがない、標準治療にはエビデンスがある、と言われますが、標準治療のエビデンスの中身は、「がんを治せない」というものです。エビデンスの有る、無し、よりも、如何なる根拠に基づく評価基準を用いているのか、まずは、「物を見る物差し」をどう考えるかの議論が必要です。