TOP樹状細胞について>がん特異抗原は、果たして存在するのか?

がん細胞は、あくまで人間の細胞です。バクテリアと人間の細胞を区別するのと、がん細胞と正常細胞を区別するのは、わけが違います。がん細胞と正常細胞は、基本的に同じ物質からできています。ただし、個々の物質の存在量や、バランス、組み合わせが異なります。NK細胞の場合は、がん特有の抗原を認識しているのではなく、正常細胞にも、がん細胞にも存在する物質を認識するセンサー、KARとKIRを多種大量に備え、複数の抗原を認識し、それらのバランスや分布などを総合認識することで、がん細胞と正常細胞を区別しています。NK細胞が認識する「抗原性」というのは、特定の単一物質があるかないか、という単純なものを意味するのではありません。

通常、がん細胞に対する抗体が体内で自然につくられることはありません。がんに対する抗体医薬品を作成するのにも相当の苦労と長いプロセスが必要です。これまで大きな大学や巨大医薬品メーカーなどが、莫大な研究費と膨大な人数の研究者を抗体探索に投入してきましたが、がん細胞だけに特異的に結合する抗体は一つも見つかっておりません。正常細胞にも結合しますが、がん細胞の方に、より沢山、結合する抗体を製品化してきたのです。
これまで100種類近い腫瘍マーカーが実用化されてきましたが、がん特異物質は一つも使われていません。細胞表面に存在する蛋白質およそ400種類全てがチェックされましたが、がん特異性の変異を実用的な抗原として利用できるものはありませんでした。
がん細胞に特徴的に見られる遺伝子変異はあるのですが、では、治療に応用できるのかというと、残念ながら、単独物質として、顕著ながん特異性抗原とはならないのです。

がん特異抗原は研究者の永年の夢です。
しかしそれは、永遠の夢なのかもしれません。