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2008年11月22日

  

免疫

2008.11.22.   免疫細胞療法のサイトによく出てくるウィリアム・B・コーリーさんのがん治療。 19世紀、外科医だったコーリーさんが、危険な溶血性連鎖球菌をがん患者に投与して、治療効果を上げたものの、菌の感染により、命を落とす患者もまた続出した、という逸話です。 妹さんがまとめた資料が公表されたそうですが、もちろん、昔のことですので、ほんとにどういう結果だったのか、厳密な検証ができるわけではありません。 

ですが、この逸話が生き続けるのは、やはり、ある的を射ているからに他ありません。 事実かどうか、という細部、枝葉のことより、この話が示唆する原理的なものに、現代にも通じるものがあるから、今なお、語り継がれているのです。

実際、感染症にかかって苦しんだら、何故か、がんがよくなってしまった!という現象は、昔から知られているのです。 かといって、病原体を意図的に患者さんに投与すると、感染症で亡くなってしまうかもしれません。 この現象を、がん治療として、そのまま実行するのは危険すぎます。

ピシバニ-ルという医薬品は、今も、がん治療に使われていますが、これは、溶血性連鎖球菌を何世代も体外培養することで弱毒化し(培養された菌は、毒性が弱くなります。逆に、人間の体内で増殖した菌は毒性が強いのです。)、
更に、殺して凍結乾燥したものです。 では、コーリーさんがやった治療法と同じ効果が期待できるのでしょうか。  そうはいきません。  弱い菌であり、しかも死んでいるので、生きて感染力が強い菌より、免疫に対する刺激が弱いのです。  その代わり、もう感染はしないのですから、コーリーさんの治療法より遥かに安全です。

丸山ワクチンの話は、今日はやめておきます。
またの機会に。

さて、どうして、感染症にかかると、がんがよくなる、こういう現象が起こるのでしょうか。 いつか、急性と、慢性の違いについて、説明しようと考えておりますが(急性と慢性は全く逆の症状なのです)、ここでは、省略して、基本的に、急性の感染症の場合、自然免疫が強く刺激され、感染症と戦う次手に、がんを殺してしまう、と考えられています。  がん、は慢性病です。 がんが増殖しているということは、免疫系が、がんを受け容れてしまった、ということです。 ところが、感染症の刺激によって、強く励起された自然免疫が、擬人的な言い方をすれば、改めて、がんについて考え直し、攻撃することに決め、腫瘍組織が小さくなっていくのです。 

重要なことは、強力なインパクトを自然免疫に与え、寛容状態、今は、抑制状態とか、免疫抑制下にある、という言い方をしますが、ブレーキがかかっている状態から、一気に、強制排除、戦闘モードに切り替えさせる、ということです。

ANK療法も、条件が許せば、可能な限り、強く、集中的に行う方が効果的です。実際には、患者さんの容態、他の治療法との兼ね合い、資金的なこと、色んな事情により、少しずつ、期間を空けて、長く続ける、というパターンも多いのですが、がんを全力で叩くためには、一気に最強のインパクトを与える方が理想的です。 

もう一つ重要なことがあります。 インパクトは、抗原性とは関係ない、ということです。 毒性とか、感染力、とにかく体にとって、危険度が高いほど、自然免疫は強く刺激されます。 がんを叩くのに、がんの抗原は必要ありません。 自然免疫を叩き起こす強いインパクトがあればいいのです。 ところが、強いインパクトというのは、つまり、患者さんの生命にとって危険なもの、ということになります。 毒を入れれば、がんは治せるだろうけど、それでは患者さんの命が危ない、ここに、免疫療法が乗り越えるべき、根本的なジレンマがあるのです。

ワクチンの話も、まとめてさせていただきますが、抗原だけでは、何の効果もないので、アジュバンドという、自然免疫を叩き起こす刺激物を一緒に投与します。 ワクチンの決め手は、抗原以上に、如何に効果的に自然免疫を活性化するアジュバンドを配合するかにかかっています。 獲得免疫を動かすのにも、まず、自然免疫を動かし、免疫抑制下から免疫システムを戦闘態勢に移行させる必要があるのです。 

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