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2019年09月16日

  

免疫

7ヶ月前に豚コレラ問題の投稿をしていたのですが、このところ急に反響がありますので改めてワクチンに的を絞って書かせて戴きます。多少の重複はご容赦ください。

 

豚コレラの感染拡大が収束せず、殺処分が行われています。なぜワクチンを使わないのかという声が根強いようですが今、ワクチンを使うとデメリットの方が遥かに大きい可能性があります。

 

豚コレラの場合は経口生ワクチンが実用化され使用実績もあります。かつて大々的に使用され豚ワクチンの撲滅に貢献したとする説がありますが、実際には徹底した封じ込めを行いましたので何が効いたのかがわからない、というか複合的に効果を挙げるものと考えるのが妥当でしょう。少なくとも生ワクチンというのは感染予防効果をある程度期待できます。不活化ワクチンで実際に感染予防効果を発揮できるものはなかなか見当たらないのですが生ワクチンであれば予防効果を見込めます。ではなぜ生ワクチンの種類が多くないのかというと、安全な生ワクチンをつくるのが困難だからです。 生ワクチンは毒性を弱めた弱毒株ウイルスを実際に感染させるものですので、まず不安定なウイルス、代表的なものとしてエイズウイルスやインフルエンザウイルスに対して生ワクチンを使用すれがたちどころにワクチンによる感染となります。 弱毒株が高頻度で再強毒化するからです。 豚コレラの場合は比較的安定な弱毒株が使われていますが、それでもやはり過去に再強毒化による感染を疑われるケースが報告されています。 人間のポリオウイルスに対する生ワクチンの場合、やはり経口生ワクチンという点が共通ですが、接種された赤ちゃんは近年、事故は起こっていませんが、赤ちゃんの糞便のウイルスに大人が感染する事例が相次いでいます。

 

大量の豚に接種し、消化管内の環境もまちまちで、そこで膨大な量のウイルスが増殖する過程で遺伝子の組み換えが起こり再強毒化するリスクはかなりあるものと考えておくべきです。 過去大量使用した時はどうだったのかというと、全国で発生している状況でワクチンを接種したのでワクチンによる発生を特定するのが難しく、発生していたとしても検出されない可能性大ですので、正確なことはわかりません。

 

ワクチンの使用というのは大集団に対する伝播速度の低下が目的です。つまり日本中で豚コレラが発生していれば一気に生ワクチンを接種し、火の手を鎮める、そういう使い方が基本です。この場合、多少、再強毒化されたウイルスが発生したとしても、元々、全国で流行しているのですから従来のウイルスとかなり性質が異なる新型のものが出現しない限り大勢に影響はありません。(新型出現のリスクはあります。豚の体内や他の動物の体内で他のウイルスと組み替えを起こす可能性は常に否定できません)

 

畜産農家の方が、感染が心配だから念のためワクチンをうっておきたい、と個別に注文して自由にうつ性格のものではありません。そんなことをすれば方々から再強毒化株が出現し感染拡大につながりかねません。 「ワクチンをうっておけば感染しないと思う人が多い」この大きな誤解が大問題なのです。生ワクチンはほとんどあてにならない不活化ワクチンよりは感染予防効果を期待できますが、かといって完璧ということはありません。 予防できないことも多々あります。 そこで野生のイノシシとの接触を防ぐという観点と、ワクチン接種により体内にウイルスをもっている豚の脱走を防ぐという観点から物理的に豚を外界と隔離する柵などの整備を怠れば感染拡大を助長することになりかねません。

 

ワクチンを接種すると血液中の中和抗体値が上昇することをもって効果があったものと判定してしまうのですが、実際には中和抗体はウイルスを無力化しません。ただウイルスに結合しているだけです。ワクチンうてば抗体ができて、抗体がウイルスを防ぐというのは「誤解」なのですが、簡便な効果判定基準として「中和抗体の誘導」を採用してきた日本は、このような間違った認識が定着してしまっています。この点は海外からよく批判されてきたことなのですが、この本質的な問題を棚にあげても、そもそも豚コレラの生ワクチンを接種しても血中中和抗体が上昇しないケースがみられます。 この時点で完璧ではない、ということです。 さらに血中中和抗体が一時的に上昇してもすぐに下がる場合は感染予防効果は期待できません。 弱毒ウイルスが体内で活動を続けることが感染予防効果の条件となります。

 

またタイプが異なるウイルスに対してはほとんど感染予防効果がありません。ともかく、ワクチンさえ使えば感染は防げるというのは過大評価ですので、徹底した物理的封じ込め、発生したら徹底して殺処分、これが基本と腹を括らないと後手に回るほど感染拡大の炎は一気に燃え上がることになります。

 

更に問題はワクチンを接種するとワクチンによって抗体価が上昇しているのが、ワクチンに関係なく感染したために抗体価が上昇しているのか区別がつくかなくなります。 感染拡大防止は素早く発見し、速やかに封じ込めです。 抗体を使えないとなると症状がでてから発見するしかなく、ウイルスをかなり撒いた後ということになります。 今は警戒を厳にし、発生したら直ちに殺処分、発生していない畜産事業者は徹底した封じ込めという段階です。 鳥のように空は飛ばないものの野生のイノシシや脱走ブタ、これらが交配したものなど、自由に動き回る感染源の存在は頭が痛い問題です。 このイノシシに対してエサに混ぜた生ワクチンを食べさせようという意見もありますが、もちろん全国一斉ワクチン接種となれば野生のイノシシも可能な限りワクチンを食べさせる方がいいのですが、(すべての野生イノシシに食べさせるのは無理ですが)、今、それをやれば全国にウイルスを運ばせるようなものです。

 

ワクチンの使用に踏み切れば、ウイルスをばらまいたわけですから、日本は「感染国」と認定され、一定期間、豚の輸出はできなくなります。

 

ワクチンを使うのはいよいよ全国に感染の火がボーボーに燃え広がった、少なくともそうなることが確実となった時点での決断ということになります。

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