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がんワクチン(がんペプチドワクチン)

最近、がんワクチンに関するお問い合わせをいただくことが多くなっています。免疫細胞療法もがんワクチンも、免疫の力を使ってがんの治療を目指すということでは共通です。

ただし、両者には根本的な違いがあります。
実は、がんワクチンは欧米で何度となく試され、失敗の連続を重ねて参りました。失敗を重ねるには理由があります。

がんワクチンが空振りしてきた理由〜体内の「強い免疫抑制」〜

がん患者さんの体内にも免疫細胞は沢山いるのですが、強い免疫抑制下にあり、免疫の力が眠らされています。つまり、都会のネコがネズミを見ても知らんふりをしているように、がん細胞がいても、襲わなくなっているのです。

そもそも免疫が目覚めている状態なら、がん細胞はたちどころに破壊され、増殖することはありません。がんワクチンは、がんの情報を免疫系に教えるもの、つまりネコにネズミの匂いをかがせるものですが、生きているネズミを見ても眠っているネコに、いくら匂いを嗅がせても、知らん顔をしています。

この「強い免疫抑制状態」のために、がんペプチドワクチンは、空振りに終わってきたのです。

がんワクチンが超えられない壁〜がん抗原、いまだ見つからず〜

これががん細胞の匂いだ、という物質はありそうで、まだ見つかっていません。免疫細胞は、がん細胞がもつ一種類の物質だけで、「これはがん細胞だ」とか「これは正常細胞だ」と認識するのではありません。いくつもの物質の組み合わせパターンや、バランスなどを総合判断しているのです。例えば、香水は何十種類の物質を調合してつくります。微妙な配合バランスの違いで、一流の香水になったり、安物の香水になったり明暗を分けてしまいます。ましてや、香水をつくる原液は、その物質一種類だけだと、大変、不快な匂いを発するものです。

がん細胞も正常細胞も、同じ物質からできています。ただ、その物質の存在バランスが異なるのです。そこへ、たった一種類とか、数種類だけ人工的にペプチドという物質を合成しても、それだけでがん細胞の情報とするには不十分です。
免疫細胞療法は、以上のがんワクチンが越えられない壁を乗り越えるために開発されたものです。

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体内にあるがん細胞の情報=がん抗原に、なぜ免疫は反応しないのか

強い免疫抑制下にある患者さんの体内には、いくら沢山、免疫細胞がいても、目の前のがん細胞を攻撃しないのです。必要なのは、がん細胞の情報ではありません。そんなものは、免疫細胞の目の前にゴロゴロ転がっているのです。
問題は、「眠らされている状態」です。がん細胞は、目の上のコブである免疫細胞を眠らせるのです。そこで、がん細胞の眠り薬がとどかない患者さんの体外に免疫細胞を取り出し、十分、目を覚まさせてから、体内に戻す。これが米国政府研究機関NIH(国立衛生研究所)が確立した免疫細胞療法の原点です

活性を高めたNK細胞はがん細胞を見逃さない

免疫細胞の中でも、ナチュラルキラー(NK)細胞は、がん細胞と正常細胞の表面物質の分布パターンの違いを認識します。がん細胞が正常細胞と同じ物質を使っていても、騙されません。
活性を高めたNK細胞は、特に大量のセンサーを細胞表面に突き出し、がん細胞特有のわずかなシグナルを見逃しません。
キラーT細胞も標的を教えれば、覚えた標的と同じ信号パターンを持つがん細胞を殺します。ただし、キラーT細胞の教育は、患者の体内では難しく、体外で、目を覚ました状態で行う必要があります。
また、標的は合成された単純なペプチドでは不十分であり、がん細胞を丸ごと与える必要があります。そうすることで、キラーT細胞は、がん細胞の何十というシグナルを認識し、「あ、これが自分の標的なんだ!」と、覚えるのです。